がん対策基本法

(平成十八年六月二十三日法律第九十八号)
最終改正:平成二十八年十二月十六日法律第百七号
下線:二十八年改正部分

目次     

第一章 総則(第一条―第九条)

第二章 がん対策推進基本計画等(第十条―第十二条)

第三章 基本的施策

第一節 がんの予防及び早期発見の推進(第十三条・第十四条)

第二節 がん医療の均てん化の促進等(第十五条―第十八条)

第三節 研究の推進等(第十九条)

第四節 がん患者の就労等(第二十条―第二十二条)

第五節 がんに関する教育の推進(第二十三条)

第四章 がん対策推進協議会(第二十四条・第二十五条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、我が国のがん対策がこれまでの取組により進展し、成果を収めてきたものの、なお、がんが国民の疾病による死亡の最大の原因となっている等がんが国民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状並びにがん対策においてがん患者(がん患者であった者を含む。以下同じ。)がその状況に応じて必要な支援を総合的に受けられるようにすることが課題となっていることに鑑み、がん対策の一層の充実を図るため、がん対策に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師等及び事業主の責務を明らかにし、並びにがん対策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、がん対策の基本となる事項を定めることにより、がん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

(基本理念)

第二条 がん対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

がんの克服を目指し、がんに関する専門的、学際的又は総合的な研究を推進するとともに、がんの予防、診断、治療等に係る技術の向上その他の研究等の成果を普及し、活用し、及び発展させること。

がん患者がその居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)を受けることができるようにすること。

がん患者の置かれている状況に応じ、本人の意向を十分尊重してがんの治療方法等が選択されるようがん医療を提供する体制の整備がなされること。

四 がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指し、がん患者が、その置かれている状況に応じ、適切ながん医療のみならず、福祉的支援、教育的支援その他の必要な支援を受けることができるようにするとともに、がん患者に関する国民の理解が深められ、がん患者が円滑な社会生活を営むことができる社会環境の整備が図られること。

五 それぞれのがんの特性に配慮したものとなるようにすること。

六 保健、福祉、雇用、教育その他の関連施策との有機的な連携に配慮しつつ、総合的に実施されること。

七 国、地方公共団体、第五条に規定する医療保険者、医師、事業主、学校、がん対策に係る活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に実施されること。

八 がん患者の個人情報(個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。)の保護について適正な配慮がなされるようにすること。

(国の責務)

第三条  国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、がん対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)

第四条  地方公共団体は、基本理念にのっとり、がん対策に関し、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(医療保険者の責務)

第五条 医療保険者(高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第七条第二項に規定する保険者及び同法第四十八条に規定する後期高齢者医療広域連合をいう。)は、国及び地方公共団体が講ずるがんの予防に関する啓発及び知識の普及、がん検診(その結果に基づく必要な対応を含む。)に関する普及啓発等の施策に協力するよう努めなければならない。

(国民の責務)

第六条 国民は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣が健康に及ぼす影響、がんの原因となるおそれのある感染症等がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払い、必要に応じ、がん検診を受けるよう努めるほか、がん患者に関する理解を深めるよう努めなければならない

(医師等の責務)

第七条  医師その他の医療関係者は、国及び地方公共団体が講ずるがん対策に協力し、がんの予防に寄与するよう努めるとともに、がん患者の置かれている状況を深く認識し、良質かつ適切ながん医療を行うよう努めなければならない。

(事業主の責務)

第八条 事業主は、がん患者の雇用の継続等に配慮するよう努めるものとともに、国及び地方公共団体が講ずるがん対策に協力するよう努めるものとする。

(法制上の措置等)

第九条 政府は、がん対策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。


第二章 がん対策推進基本計画等

(がん対策推進基本計画)

第十条 政府は、がん対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、がん対策の推進に関する基本的な計画(以下「がん対策推進基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 がん対策推進基本計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする。

3 厚生労働大臣は、がん対策推進基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 厚生労働大臣は、がん対策推進基本計画の案を作成しようとするときは、関係行政機関の長と協議するとともに、がん対策推進協議会の意見を聴くものとする。

5 政府は、がん対策推進基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

6 政府は、適時に、第二項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

7 政府は、がん医療に関する状況の変化を勘案し、及びがん対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも六年ごとに、がん対策推進基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。

8 第三項から第五項までの規定は、がん対策推進基本計画の変更について準用する。

(関係行政機関への要請)

第十一条 厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対して、がん対策推進基本計画の策定のための資料の提出又はがん対策推進基本計画において定められた施策であって当該行政機関の所管に係るものの実施について、必要な要請をすることができる。

(都道府県がん対策推進計画)

第十二条 都道府県は、がん対策推進基本計画を基本とするとともに、当該都道府県におけるがん患者に対するがん医療の提供の状況等を踏まえ、当該都道府県におけるがん対策の推進に関する計画(以下「都道府県がん対策推進計画」という。)を策定しなければならない。

2 都道府県がん対策推進計画は、医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の四第一項に規定する医療計画、健康増進法(平成十四年法律第百三号)第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第百十八条第一項に規定する都道府県介護保険事業支援計画その他の法令の規定による計画であってがん対策に関連する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。

3 都道府県は、当該都道府県におけるがん医療に関する状況の変化を勘案し、及び当該都道府県におけるがん対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも六年ごとに、都道府県がん対策推進計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更するよう努めなければならない。


第三章 基本的施策

★第一節 がんの予防及び早期発見の推進

(がんの予防の推進)

第十三条 国及び地方公共団体は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣及び生活環境が健康に及ぼす影響、がんの原因となるおそれのある感染症並びに性別、年齢等に係る特定のがん及びその予防等に関する啓発及び知識の普及その他のがんの予防の推進のために必要な施策を講ずるものとする。

(がん検診の質の向上等)

第十四条 国及び地方公共団体は、がんの早期発見に資するよう、がん検診の方法等の検討、がん検診の事業評価の実施、がん検診に携わる医療従事者に対する研修の機会の確保その他のがん検診の質の向上等を図るために必要な施策を講ずるとともに、がん検診の受診率の向上に資するよう、がん検診に関する普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、がん検診によってがんに罹患している疑いがあり、又は罹患していると判定された者が必要かつ適切な診療を受けることを促進するため、必要な環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

3 国及び地方公共団体は、前二項に規定する施策を効果的に実施するため、がん検診の実態の把握のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。


★第二節 がん医療の均てん化の促進等

(専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成)

第十五条 国及び地方公共団体は、手術、放射線療法、化学療法、緩和ケア(がんその他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安を緩和することによりその療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療、看護その他の行為をいう。第十七条において同じ。)のうち医療として提供されるものその他のがん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成を図るために必要な施策を講ずるものとする。

(医療機関の整備等)

第十六条 国及び地方公共団体は、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しくそのがんの状態に応じた適切ながん医療を受けることができるよう、専門的ながん医療の提供等を行う医療機関の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。

国及び地方公共団体は、がん患者に対し適切ながん医療が提供されるよう、国立研究開発法人国立がん研究センター、前項の医療機関その他の医療機関等の間における連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。

(がん患者の療養生活の質の維持向上)

第十七条 国及び地方公共団体は、がん患者の状況に応じて緩和ケアが診断の時から適切に提供されるようにすること、がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が確保されるようにすること、居宅においてがん患者に対しがん医療を提供するための連携協力体制を確保すること、医療従事者に対するがん患者の療養生活(これに係る家族の生活を含む。以下この条において同じ。)の質の維持向上に関する研修の機会を確保することその他のがん患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策を講ずるものとする。

(がん医療に関する情報の収集提供体制の整備等)

第十八条 国及び地方公共団体は、がん医療に関する情報の収集及び提供を行う体制を整備するために必要な施策を講ずるとともに、がん患者(その家族を含む。第二十条及び第二十二条において同じ。)に対する相談支援等を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、がんに係る調査研究の促進のため、がん登録等の推進に関する法律(平成二十五年法律第百十一号)第二条第二項に規定するがん登録(その他のがんの罹患、診療、転帰等の状況の把握、分析等の取組を含む。以下この項において同じ。)、当該がん登録により得られた情報の活用等を推進するものとする。


★第三節 研究の推進等

第十九条 国及び地方公共団体は、がんの本態解明、革新的ながんの予防、診断及び治療に関する方法の開発その他のがんの罹患率及びがんによる死亡率の低下に資する事項並びにがんの治療に伴う副作用、合併症及び後遺症の予防及び軽減に関する方法の開発その他のがん患者の療養生活の質の維持向上に資する事項についての研究が促進され、並びにその成果が活用されるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 前項の施策を講ずるに当たっては、罹患している者の少ないがん及び治癒が特に困難であるがんに係る研究の促進について必要な配慮がなされるものとする。

3 国及び地方公共団体は、がん医療を行う上で特に必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の早期の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)の規定による製造販売の承認に資するようその治験が迅速かつ確実に行われ、並びにがん医療に係る有効な治療方法の開発に係る臨床研究等が円滑に行われる環境の整備のために必要な施策を講ずるものとする。


★第四節 がん患者の就労等

(がん患者の雇用の継続等)

第二十条 国及び地方公共団体は、がん患者の雇用の継続又は円滑な就職に資するよう、事業主に対するがん患者の就労に関する啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。

(がん患者における学習と治療との両立)

第二十一条 国及び地方公共団体は、小児がんの患者その他のがん患者が必要な教育と適切な治療とのいずれをも継続的かつ円滑に受けることができるよう、必要な環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

(民間団体の活動に対する支援)

第二十二条 国及び地方公共団体は、民間の団体が行うがん患者の支援に関する活動、がん患者の団体が行う情報交換等の活動等を支援するため、情報提供その他の必要な施策を講ずるものとする。


★第五節 がんに関する教育の推進

第二十三条 国及び地方公共団体は、国民が、がんに関する知識及びがん患者に関する理解を深めることができるよう、学校教育及び社会教育におけるがんに関する教育の推進のために必要な施策を講ずるものとする。

 

第四章 がん対策推進協議会

第二十四条 厚生労働省に、がん対策推進基本計画に関し、第十条第四項(同条第八項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、がん対策推進協議会(以下「協議会」という。)を置く。

第二十五条 協議会は、委員二十人以内で組織する。

協議会の委員は、がん患者及びその家族又は遺族を代表する者、がん医療に従事する者並びに学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命する。

協議会の委員は、非常勤とする。

前三項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

 附 則 抄 (施行期日)

第一条  この法律は、平成十九年四月一日から施行する。

附 則 (平成二十八年十二月十六日法律第百七号) 抄
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。

大阪府がん対策推進条例

大阪府がん対策推進条例

平成二十三年三月二十二日

大阪府条例第六十八号

大阪府がん対策推進条例を公布する。

大阪府がん対策推進条例

大阪府は、全国に先駆けて、「がん登録」事業に取り組むとともに、がんを中心とする生活習慣病に関する専門施設である大阪府立成人病センターを設置するなど、がん予防とがん医療向上の取組を推進してきた。しかるに、肺、胃、肝臓、大腸、乳などのいわゆる五大がんによる死亡率は全国に比して高い状況が続いており、また、がん検診受診率は全国最低水準で推移している状況にある。

このような現状を踏まえ、全ての府民が生命を尊重する良心に基づき、温かみのある適切ながん対策を推進することにより、府民をがんから守り、健康な生活を送ることができるよう努めるとともに、がんになっても社会での役割を果たすことができ、お互いに支え合い、安心して暮らしていける地域社会を実現することを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第一条 この条例は、がんが府民の疾病による死亡の最大の原因であり、その対策が府民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状に鑑み、がん対策基本法(平成十八年法律第九十八号)の趣旨を踏まえ、がん対策に関し、府、保健医療関係者及び府民の責務を明らかにし、がんの予防及び早期発見に資するとともに科学的な知見に基づく適切ながんに係る医療(以下「がん医療」という。)を提供する体制の整備を促進することにより、総合的ながん対策を府民とともに推進することを目的とする。

(府の責務)

第二条 府は、国、市町村、医療機関、医療関係団体並びにがん患者及びその家族等で構成される民間団体その他の関係団体と連携を図りつつ、がん対策基本法第十二条第一項の規定により府が策定するがん対策推進計画(第十七条において「計画」という。)に従い、本府の特性に応じた施策を実施する責務を有する。

(平二九条例三〇・一部改正)

(保健医療関係者の責務)

第三条 保健医療関係者(がんの予防及び早期発見の推進やがん医療に携わる者をいう。以下同じ。)は、本府及び市町村のがん対策に協力するよう努めなければならない。

(府民の責務)

第四条 府民は、喫煙、食生活、飲酒、運動などの生活習慣が健康に及ぼす影響等がんにかかりやすくなる要因を排除するための正しい知識を学び、がんの予防に努めるとともに、定期的にがん検診を受けるよう努めなければならない。

(がん情報の収集と提供)

第五条 府は、がんの罹患、死亡等、がん対策に資する情報を収集し、分析するための取組等必要な施策を講ずるものとする。

2 府は、府民に対して、がんの予防及び早期発見、がん医療並びに患者支援に関する適切な情報を提供するものとする。

(がんの予防の推進)

第六条 府は、関係機関と協力し、がんの予防に資するため、次に掲げる施策を推進するものとする。

一 喫煙、食生活、飲酒、運動などの生活習慣及び生活環境が健康に及ぼす影響など、がんの予防のための普及啓発

二 受動喫煙防止のため、健康増進法(平成十四年法律第百三号)第二十五条の努力義務を有する全施設、その他の多数の者が利用する施設における禁煙を推進

三 健康診断・がん検診実施機関における喫煙者に対する禁煙支援、生活習慣の改善のための指導及びこれらについての研修の実施

四 小学校、中学校及び高等学校におけるがんの予防につながる学習活動の充実・推進

五 前各号に掲げるもののほか、府内におけるがんの予防のための必要な施策

(早期発見の推進)

第七条 府は、関係機関と協力し、がんの早期発見に資するため、次に掲げる施策を推進するものとする。

一 がん検診の内容及び精度管理体制の充実並びに精度管理指標の公表

二 がん検診精密検査の体制の確立

三 がん検診の受診率の向上のための、計画組織化されたがん検診の実施

四 がん検診に携わる医療従事者の資質の向上を図るための研修の機会の確保

五 市町村と協力した府民のがん検診受診率の向上のための施策

六 前各号に掲げるもののほか、がんの早期発見のために必要な施策

(がん医療の充実)

第八条 府は、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しくそのがんの状態に応じた適切な医療を受けることができるようにするとともに、府民に質の高いがん医療を提供するため、次に掲げる施策を推進するものとする。

一 がん診療連携拠点病院の整備

二 がん診療連携拠点病院に準ずる病院の整備

三 前二号に掲げる病院とその他の医療機関等との役割分担及び連携の強化

四 放射線療法及び化学療法の推進

五 がん患者の意向を踏まえ、住み慣れた家庭や地域での療養を選択するための在宅医療及び介護の提供体制の整備

六 手術、放射線治療、化学療法、緩和ケア、リハビリテーションその他のがん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成及び確保

七 前各号に掲げるもののほか、府内におけるがん医療の向上のために必要な施策

(緩和ケアの推進)

第九条 府は、がん患者の身体症状の緩和や家族を含めた精神心理的問題の援助を治療の初期段階から行う緩和ケアの充実を図るため、次に掲げる施策を講ずるものとする。

一 緩和ケア病棟、緩和ケアチーム及び緩和ケア外来の整備の促進

二 緩和ケアに関する専門的な知識及び技能を有する医療従事者の育成

三 がん患者の状況に応じた治療の初期段階からの緩和ケアの推進

四 在宅で緩和ケアを受けることができる体制整備の支援

五 緩和ケアに関する関係機関及び関係団体との連携の強化

六 前各号に掲げるもののほか、緩和ケアの充実のために必要な施策

(肝炎肝がん対策の推進)

第十条 府は、肝炎肝がん対策に資するため、次に掲げる施策を推進するものとする。

一 肝炎ウイルス検診の受診率の向上のための、計画組織化された肝炎ウイルス検診の実施

二 肝炎ウイルス陽性者に対する相談支援・診療体制の充実

三 前二号に掲げるもののほか、肝炎肝がん対策を推進するために必要な施策

(女性に特有のがん対策の促進)

第十一条 府は、女性に特有のがん対策に資するため、次に掲げる施策を推進するものとする。

一 がんにかかりやすい年齢を考慮したがんの予防に関する正しい知識の普及啓発

二 女性に特有のがんに係る検診の受診率の向上のための施策

三 前二号に掲げるもののほか、女性に特有のがん対策を推進するために必要な施策

(小児がん対策の充実)

第十二条 府は、小児がん対策を充実するため、次に掲げる施策を推進するものとする。

一 小児がんの実態把握の強化

二 小児がん診療に関わる医療関係機関間の連携及び協力の促進

三 前二号に掲げるもののほか、府内における小児がん医療向上のために必要な施策

(骨髄移植及び臍帯血移植の促進)

第十三条 府は、白血病等の血液がんに対し有効な治療法である骨髄移植及び臍帯血移植を促進するため、保健医療関係者と連携して骨髄バンク事業及び臍帯血バンク事業の普及啓発等必要な施策を講ずるものとする。

(がん登録の推進)

第十四条 府は、効果的かつ総合的ながん対策の実現に向けて、地域がん登録の推進のため、次に掲げる施策を講ずるものとする。

一 人口動態情報、住民基本台帳を活用した地域がん登録事業を推進するための施策

二 地域がん登録への医療機関の連携の強化

三 地域がん登録に関する府民への情報提供、広報の強化

四 前三号に掲げるもののほか、がん登録の推進のために必要な施策

2 前項の施策を講ずるに当たっては、登録された情報がその利用目的の達成に必要な範囲を超えて用いられることがないようにする等、がん患者にかかる個人情報の保護が適切に講じられるようにしなければならない。

(研究の推進)

第十五条 府は、希少がん、難治性がん等がんの本態解明、革新的ながんの予防、診断及び治療に関する方法の開発その他の先進的な医療の導入に向けた研究について情報収集するとともに、その研究を促進するため必要な施策を講ずるものとする。

(患者等の支援)

第十六条 府は、がん患者の療養生活の質の向上及びがん患者の身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安その他のがんに伴う負担の軽減に資するため、医療機関等と連携し、次に掲げる施策を講ずるものとする。

一 がん患者及びその家族等に対するセカンドオピニオン(診断又は治療に関して担当医師以外の医師の意見を聞くことをいう。)を含めた相談体制の充実強化

二 がん患者及びその家族等で構成される民間団体その他の関係団体が行うがん患者の療養生活及びその家族に対する活動の支援

三 がん患者及びその家族等の就労に関し必要な支援

四 前三号に掲げるもののほか、がん患者の療養生活の質の維持向上及びがんに伴う経済的負担の軽減に関し必要な施策

(大阪府がん対策推進委員会)

第十七条 がん対策に関し、次に掲げる事項を処理するため、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百三十八条の四第三項に基づく知事の附属機関として、大阪府がん対策推進委員会を置く。

一 がん対策の推進に関する基本的かつ総合的な政策及び重要事項を審議すること。

二 計画に基づく施策の実施状況について、定期的に検討を加え、必要に応じて調査し、知事に意見を述べること。

2 委員は、がん患者及びその家族等で構成される民間団体を代表する者、保健医療関係者、学識経験者、関係行政機関の職員、その他適当と認める者のうちから知事が任命する。

3 前二項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、知事が定める。

(府民運動の推進)

第十八条 府は、保健医療関係者、がん患者及びその家族等で構成される民間団体その他の関係団体、民間企業と幅広く連携し、がん対策に対する府民の理解と関心を深めるための取組を推進するものとする。

(財政上の措置)

第十九条 府は、がん対策に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(委任)

第二十条 この条例の施行に関して必要な事項は、知事が定める。

附 則

(施行期日)

1 この条例は、平成二十三年四月一日から施行する。

(この条例の見直し)

2 知事は、この条例の施行後二年を目途として、この条例の規定内容について検討を加え、その結果に基づいてこの条例の見直しを行うものとする。

附 則(平成二九年条例第三〇号)

この条例は、公布の日から施行する。

  都道府県  名称  制定日  施行日 ※
1 北海道  北海道がん対策推進条例  2012年3月23日 2012年4月1日
2 青森県 青森県がん対策推進条例 2016/12/16 2016年12月16日
3 岩手県 岩手県がん対策推進条例 2014年3月28日 2014年4月1日
4 宮城県      
5 秋田県  秋田県がん対策推進条例  2011年3月8日 2011年4月1日
6 山形県 山形県誰もががんを知り、
県民みんなでがんの克服を目指す条例
2016/12/21 2016年12月27日
7 福島県 福島県がん対策の推進に関する条例 2014年3月24日 2014年4月1日
8 茨城県 茨城県がん検診を推進し,
がんと向き合うための県民参療条例
2015/12/18 2015年12月18日
9 栃木県      
10 群馬県  群馬県がん対策推進条例  2010年12月16日 2010年12月24日
11 埼玉県  埼玉県がん対策推進条例  2013年12月20日 2014年4月1日
12 千葉県  千葉県がん対策推進条例  2013年2月22日 2013年3月1日
13 東京都 (2012/3/29平成24年議会で否決)    
14 神奈川県  神奈川県がん克服条例  2008年3月31日 2008年4月1日
15 新潟県  新潟県がん対策推進条例  2007年3月27日 2007年3月27日
16 富山県  富山県がん対策推進条例  2012年12月11日 2013年4月1日
17 石川県 石川県がん対策推進条例 2016/3/25 2016年3月25日
18 福井県      
19 山梨県  山梨県がん対策推進条例  2012年3月20日 2012年4月1日
20 長野県  長野県がん対策推進条例  2013年9月30日 2013年10月15日
21 岐阜県  岐阜県がん対策推進条例  2010年7月1日 2010年9月1日
22 静岡県 静岡県がん対策推進条例 2016/12/25 2016年12月25日
23 愛知県  愛知県がん対策推進条例  2012年10月16日 2012年10月16日
24 三重県 三重県がん対策推進条例 2014年3月27日 2014年4月1日
25 滋賀県  滋賀県がん対策の推進に関する条例  2013年12月20日 2013年12月27日
26 京都府  京都府がん対策推進条例  2011年3月11日 2011年3月18日
27 大阪府  大阪府がん対策推進条例  2011年3月22日 2011年4月1日
28 兵庫県      
29 奈良県  奈良県がん対策推進条例  2009年10月9日 2009年10月9日
30 和歌山県  和歌山県がん対策推進条例  2012年12月26日 2012年12月28日
31 鳥取県  鳥取県がん対策推進条例  2010年6月23日 2010年6月29日
32 島根県  島根県がん対策推進条例  2006年9月29日 2006年9月29日
33 岡山県 岡山県がん対策推進条例 2014年3月20日 2014年3月20日
34 広島県 広島県がん対策推進条例 2015/3/16 2015年3月16日
35 山口県 山口県がん対策推進条例 2014/10/14 2014年10月14日
36 徳島県  徳島県がん対策推進条例  2010年3月30日 2010年3月30日
37 香川県  香川県がん対策推進条例  2011年10月5日 2011年10月11日
38 愛媛県  愛媛県がん対策推進条例  2010年3月26日 2010年4月1日
39 高知県  高知県がん対策推進条例  2007年3月23日 2007年4月1日
40 福岡県      
41 佐賀県 佐賀県がんを生きる社会づくり条例 2014年3月20日 2014年3月20日
42 長崎県  長崎県がん対策推進条例  2008年7月25日 2008年8月15日
43 熊本県      
44 大分県  大分県がん対策推進条例  2011年3月15日 2011年4月1日
45 宮崎県  宮崎県がん対策推進条例  2012年3月29日 2012年3月29日
46 鹿児島県      
47 沖縄県  沖縄県がん対策推進条例  2012年7月19日 2012年8月3日

市区町村条例

市区町村の条例 ※ 施行日には公布日を含む

市区町村 名称 制定日 施行日※

島根県 出雲市 出雲市がん撲滅対策推進条例 2007年2月20日 2007年2月20日

和歌山県 岩出市 岩出市がん対策推進条例 2007年12月7日 2007年12月7日

東京都 日の出町 がん医療費の助成に関する条例 2010年6月2日 ―

千葉県 匝瑳(そうさ)市 がん対策推進条例 2010年9月21日 2010年10月1日

東京都 豊島区 豊島区がん対策推進条例 2010年12月13日 2011年4月1日

岡山県 岡山市 岡山市がん対策基本条例 2011年3月11日 2011年4月1日

千葉県 柏市 柏市がん対策基本条例 2011年3月18日 2011年3月28日

愛知県 名古屋市 名古屋市がん対策推進条例 2012年3月19日 2012年3月28日

兵庫県 神戸市 神戸市がん対策推進条例 2014年3月27日 2014年4月1日

神奈川県 横浜市 横浜市がん撲滅対策推進条例 2014年6月3日 2014年10月1日